田舎の母ちゃん ~祭りで褌になった男らしい息子に惹かれる還暦母~
海岸沿いを走る列車から見える景色は昔と何も変わっていない。この景色を見るのは確か祖父の葬式以来だから5年ぶりだろう。もう久しく帰ることもなく両親とも顔を合わせていなかった。32歳の俺が久々に帰省したのはちょっとした訳があったからだ。
地元の駅を降りるとその駅はいまは無人駅になっていたことに驚いた。今は無骨な改札機があるだけで人影はどこにもない。さらに駅を出ると駅前はコンビニを除いてみんなシャッターが下り、すっかり寂れてしまっていた。
「5年でこんなにも変わるものなのか」
俺が住んでいたころから過疎化は問題となっていたが、こんなにも一気に寂れてしまった姿を見ると胸が痛い。田舎が嫌いで都会へと出たが、やはり故郷が寂れるのは辛いものだ。
そんな風に感傷に浸っているとロータリーに一台の軽自動車が入ってきて俺の前で止まった。助手席側の窓が開き、運転席に座っていた熟年女性が顔をのぞかせてくる。
「和彦、早かったのね」
そう言って車の運転手、俺の母は自分が遅れたことに悪びれる様子もなかった。
「お袋のほうが遅かったんだよ」
「文句言うなら乗らなくていいのよ」
「いや乗るから」
俺が乗ると母はすぐにアクセルを踏み込んだ。ロータリーを出ると車がほとんどいない県道を母の荒い運転の軽自動車が走っていく。
母と最後に会ったのは5年前でその時と変わりないように見えた。普段からお洒落とは無縁で、すっぴんでいることも多く、せいぜい白髪を隠すために髪を茶色く染めているくらいだ。だがそれが余計におばさんっぽく思えてしまう。その髪はやや傷んできていて元気が取り柄だった母の顔にも覇気が感じられない。今年で還暦を迎えたことを思い出すと母も老いてきているのだと実感せざる得なかった。
「ただいまー」
「おう、帰ってきたか」
家の玄関を開けると奥からしわがれた声が聞こえてきた。親父だ。廊下を進み、親父の部屋に行くと畳の上で横になったまま俺のほうへと顔を向けた。俺に顔を向けると嬉しそうに笑顔を見せた。
「元気そうじゃないか」
頭はすっかり禿げ上がって顔は深い皺が刻まれている初老といってもいいような風貌だが横になって動かないままでいる姿を見るとはやり父も年なのだと実感してしまう。
「親父のほうはどうなんだよ、腰は?」
父は照れくさそうに腰を摩っていた。
「まあまあだな。今回はお前が来てくれて助かった」
事は1週間ほど前のことだ。父は庭仕事をしているときに腰を痛めてしまい医者からしばらく安静にするようにと告げられた。だが町の祭事が控えていて、神輿の担ぎ手を任されていた父はどうしても出たがっていた。だが医者に止められた以上それは叶わず、代わりに俺にその役目をやってほしいと頼んできたのだった。
「町も男が減ってやり手がいないんだ。だから頼む」
「今回だけだからな」
「ああ、分かってる。ありがとうな」
以前は父の立場が圧倒的に強く俺に感謝を述べることなどなかったそれが今では素直に感謝してくれるなんて慣れなくて恥ずかしくなってしまう。
「和彦、ほら準備するからこっちおいで」
母に急かされて父の部屋を出て今の方へと向かうと母は細長い白い布を持って俺を待っていた。
「夕方には集まらないといけないんだから早く着替えないと。ほら服脱いで」
「え、ここで!?」
「そうよ。あんた褌の締めからわからないでしょ」
そう、神輿の担ぎ手は褌だけの格好にならなくてはいけない。これが代々続くこの地の祭りなのだ。父はその担ぎ手に誇りを持っていたが俺は恥ずかしくて一度もしたことはなかった。今時そんな恰好はとてもじゃないが恥ずかしくて人前どころか家でする気にもなれない。
だが今回は親に泣きつかれたこともあり渋々することにしたのだった。
「わかったよ。服脱ぐから待ってて」
母が見ている前で背を向けて全裸になっていくだけでも恥ずかしい、両手でしっかりと股間を隠しながら褌を持つ母の方へと向かうと慣れた手つきで俺の股に褌を当てた。
「その手、邪魔!」
手をすぐさまどけると股間を細い布地が覆っていく。母は俺のことには全く興味がないように褌を締めていくが俺のほうは身体が妙に硬直していた。今まで一度たりとも母を女だと意識したことはない。けれど股間を見られたかもしれないと思うだけで変に動揺してしまう。それを必死に隠そうと平常心を装い続けた。
生地が股間に密着し、股にねじりめが食い込んで褌が身体へと一体化していく。洋式の下着とは全く違う履き心地で思っていたよりもずっとしっくりきた。
「似合うじゃない」
「そうかな?」
自分で身体を見下ろして見える格好はとても異質で違和感を覚える。デスクワークで真っ白な貧弱な肉体にはこんな物は似合っているようには思えなかった。しかも30を過ぎ少し腹が出てきていてあまり身体つきも恰好いいとはいない。
だが母は俺の姿を見てとても嬉しそうだ。
「お父ちゃんの分までしっかり頑張るんだよ」
母に背を叩かれ、俺は家を出て集合場所となる神社へと向かった。ねじり鉢巻きに褌、足袋という格好で外を出歩くことにも恥じらいがあり隠れるように向かっていたが神社には同じ格好の人ばかりで少し落ち着いた。
「おお、山本んとこのせがれか。大きくなったな」
「正夫の代わりに頼むぞ」
小さな町でみんな顔見知りばかりだ。集まった大半は父と同じ世代かそれより少し下くらいだ。同級生は何人かいるのかと思ったが一人もいなかった。
「一人でも欠けるともう神輿出せないからな。来てくれて助かったぜ」
「俺の同級生とか来ないんですか?」
「ああ、今時はこんな恰好恥ずかしいって言ってやりたがらないしそれ以前に都会に出ていくからな」
父の親友が切なそうにそう言った。俺もそんな一人だったのだから他の者を悪く言うことはできなかった。
夕方になり簡単な打ち合わせをした後、神輿を神社の倉庫から出して境内で神主に祈願してもらう。その間にも続々と境内には人が集まってきて祭りのはじまりを待っているのだ。
「よし、いくぞ」
仕切り役の男が声を上げると全員が配置につき、神輿を持ち上げた。俺は目立つ先頭に配置され、肩に太い担ぎ棒を乗せて持ち上げた。
「セイヤ!」
練習なんてしていないのに全員の声が揃い、神輿が大きく持ち上がる。そしてリズミカルに声を上げながら神輿を担いで境内を一周、その後石段を下りて町へと向かっていった。
「セイヤ!セイヤ!」
神輿を持ち上げ、声を合わせる一体感が気持ちよく最初は遠慮がちだった俺もいつの間にか堂々と腕を上げ、大声を上げていた。その姿を見に集まった人々が圧倒されるように見惚れている。
こんな経験ははじめてだ。父やここにいる男たちが神輿を続けたい理由はここにあったのだろう。普段の生活では得ることのできない優越感を感じた。まるで魔王を倒して凱旋する勇者のようだ。集まった人々は老人ばかりだがそれでも俺たちの姿を見て明るい顔を見せ、声を上げたりするところを見ると余計に俺自身にも力が湧き上がってくる。
昼間は寂れていた街道も人に溢れ、かつてと変わらぬ活気に満ちていた。
「セイヤ!!」
大声を上げながらふと沿道の人に目をやるとそこには母がいた。珍しく浴衣を着た母が俺のほうを見て久しく見たことのないような満面の笑みを浮かべている。目が合うとまるで少女のように俺に向かって軽く手を振ってきた。その行為に俺はなぜかとても胸が高鳴ってしまった。
「おい、乱れてるぞ」
「すみません」
母に見惚れてつい動きがずれてしまい注意された。いつもはなんとも思わない母親に俺はなぜかとても動揺している。その動悸は収まらずどうしてこんな気分なのかと自問自答しているうちに神輿は街道をまわり神社へと戻っていった。
「お疲れ様。やっぱ若いもんがいるといいな」
「ありがとうございます」
神輿を下ろすと樽酒が開けられて全員に振る舞われた。あまり酒は飲める方ではないが勧められるままに飲むと一気に身体に染み込んできて気分が高揚していく。祭りの興奮がより増していき、さらに何杯も貰ってしまった。
「ちょっと失礼します」
男衆は樽を囲んでまだまだ飲んでいたが抜け出し人であふれる境内を見てまわっていた。神輿を見に来た町の人が集まり昔ほどではないが的屋も軒を連ねて夜の神社は賑やかな祭り一色の光景だ。
こうした景色もいまはとても懐かしく、そして愛おしく思えてしまう。
「和彦、和彦!」
祭りの雰囲気を味わっていると声をかけられて顔を向けると母がこっちに歩いて近づいてきていた。淡い水色の浴衣姿でふだんはしない化粧もしていてすっかりお祭り気分のようだ。
「お袋、浴衣なんて珍しいな」
「だってせっかくのお祭りなんだから」
俺が地元にいたころは小さいころは母と一緒に浴衣を着ていたがすぐに着ることもなくなり母の浴衣姿は久しぶりを通り越して新鮮だった。さっきからずっと頭に浮かんでいた浴衣姿をついじろじろと見てしまう。普段着の時とは違う見慣れない母の姿に俺はどうしても落ち着かなった。
「なかなか様になってたよ。仁さんも気を利かせて前にしてくれたんだね。お陰でよく見れたよ」
そう言って母は嬉しそうにスマホに収めた俺の褌姿を見せてきた。
「撮るなよ。恥ずかしいだろ」
「あとで父ちゃんに見せるって約束したからね。本当に今日は恰好良かったよ」
横に並んだ母がしおらしい声でそういうとさらに俺は動揺し、鼓動が高鳴っていく。
「お袋も来てくれてありがとう。浴衣・・・似合ってるよ」
酔っているためか俺も柄にもないことがつい口から出てしまった。横にいる母はすぐに茶化したりするのかと思ったが全く反応がない。横目で顔を覗き込むと嬉しそうにはにかんでいるのが見えた。
暗がりの中ではにかむ母の表情がとても愛おしく思えてしまう。さらに俺は胸の鼓動が高鳴り、身体が熱くなっていった。自分でも信じられないような気分だ。そして高まる気分のまま母へと声をかけてしまった。
「お袋、こっち向いてくれ」
「え、なあに?」
まだ恥じらいながらも俺のほうへとゆっくりと身体を向けてきた。肩に両手を乗せ、顔を近づけていくが動じる様子はない。そのまま俺へキスをした。
「5年でこんなにも変わるものなのか」
俺が住んでいたころから過疎化は問題となっていたが、こんなにも一気に寂れてしまった姿を見ると胸が痛い。田舎が嫌いで都会へと出たが、やはり故郷が寂れるのは辛いものだ。
そんな風に感傷に浸っているとロータリーに一台の軽自動車が入ってきて俺の前で止まった。助手席側の窓が開き、運転席に座っていた熟年女性が顔をのぞかせてくる。
「和彦、早かったのね」
そう言って車の運転手、俺の母は自分が遅れたことに悪びれる様子もなかった。
「お袋のほうが遅かったんだよ」
「文句言うなら乗らなくていいのよ」
「いや乗るから」
俺が乗ると母はすぐにアクセルを踏み込んだ。ロータリーを出ると車がほとんどいない県道を母の荒い運転の軽自動車が走っていく。
母と最後に会ったのは5年前でその時と変わりないように見えた。普段からお洒落とは無縁で、すっぴんでいることも多く、せいぜい白髪を隠すために髪を茶色く染めているくらいだ。だがそれが余計におばさんっぽく思えてしまう。その髪はやや傷んできていて元気が取り柄だった母の顔にも覇気が感じられない。今年で還暦を迎えたことを思い出すと母も老いてきているのだと実感せざる得なかった。
「ただいまー」
「おう、帰ってきたか」
家の玄関を開けると奥からしわがれた声が聞こえてきた。親父だ。廊下を進み、親父の部屋に行くと畳の上で横になったまま俺のほうへと顔を向けた。俺に顔を向けると嬉しそうに笑顔を見せた。
「元気そうじゃないか」
頭はすっかり禿げ上がって顔は深い皺が刻まれている初老といってもいいような風貌だが横になって動かないままでいる姿を見るとはやり父も年なのだと実感してしまう。
「親父のほうはどうなんだよ、腰は?」
父は照れくさそうに腰を摩っていた。
「まあまあだな。今回はお前が来てくれて助かった」
事は1週間ほど前のことだ。父は庭仕事をしているときに腰を痛めてしまい医者からしばらく安静にするようにと告げられた。だが町の祭事が控えていて、神輿の担ぎ手を任されていた父はどうしても出たがっていた。だが医者に止められた以上それは叶わず、代わりに俺にその役目をやってほしいと頼んできたのだった。
「町も男が減ってやり手がいないんだ。だから頼む」
「今回だけだからな」
「ああ、分かってる。ありがとうな」
以前は父の立場が圧倒的に強く俺に感謝を述べることなどなかったそれが今では素直に感謝してくれるなんて慣れなくて恥ずかしくなってしまう。
「和彦、ほら準備するからこっちおいで」
母に急かされて父の部屋を出て今の方へと向かうと母は細長い白い布を持って俺を待っていた。
「夕方には集まらないといけないんだから早く着替えないと。ほら服脱いで」
「え、ここで!?」
「そうよ。あんた褌の締めからわからないでしょ」
そう、神輿の担ぎ手は褌だけの格好にならなくてはいけない。これが代々続くこの地の祭りなのだ。父はその担ぎ手に誇りを持っていたが俺は恥ずかしくて一度もしたことはなかった。今時そんな恰好はとてもじゃないが恥ずかしくて人前どころか家でする気にもなれない。
だが今回は親に泣きつかれたこともあり渋々することにしたのだった。
「わかったよ。服脱ぐから待ってて」
母が見ている前で背を向けて全裸になっていくだけでも恥ずかしい、両手でしっかりと股間を隠しながら褌を持つ母の方へと向かうと慣れた手つきで俺の股に褌を当てた。
「その手、邪魔!」
手をすぐさまどけると股間を細い布地が覆っていく。母は俺のことには全く興味がないように褌を締めていくが俺のほうは身体が妙に硬直していた。今まで一度たりとも母を女だと意識したことはない。けれど股間を見られたかもしれないと思うだけで変に動揺してしまう。それを必死に隠そうと平常心を装い続けた。
生地が股間に密着し、股にねじりめが食い込んで褌が身体へと一体化していく。洋式の下着とは全く違う履き心地で思っていたよりもずっとしっくりきた。
「似合うじゃない」
「そうかな?」
自分で身体を見下ろして見える格好はとても異質で違和感を覚える。デスクワークで真っ白な貧弱な肉体にはこんな物は似合っているようには思えなかった。しかも30を過ぎ少し腹が出てきていてあまり身体つきも恰好いいとはいない。
だが母は俺の姿を見てとても嬉しそうだ。
「お父ちゃんの分までしっかり頑張るんだよ」
母に背を叩かれ、俺は家を出て集合場所となる神社へと向かった。ねじり鉢巻きに褌、足袋という格好で外を出歩くことにも恥じらいがあり隠れるように向かっていたが神社には同じ格好の人ばかりで少し落ち着いた。
「おお、山本んとこのせがれか。大きくなったな」
「正夫の代わりに頼むぞ」
小さな町でみんな顔見知りばかりだ。集まった大半は父と同じ世代かそれより少し下くらいだ。同級生は何人かいるのかと思ったが一人もいなかった。
「一人でも欠けるともう神輿出せないからな。来てくれて助かったぜ」
「俺の同級生とか来ないんですか?」
「ああ、今時はこんな恰好恥ずかしいって言ってやりたがらないしそれ以前に都会に出ていくからな」
父の親友が切なそうにそう言った。俺もそんな一人だったのだから他の者を悪く言うことはできなかった。
夕方になり簡単な打ち合わせをした後、神輿を神社の倉庫から出して境内で神主に祈願してもらう。その間にも続々と境内には人が集まってきて祭りのはじまりを待っているのだ。
「よし、いくぞ」
仕切り役の男が声を上げると全員が配置につき、神輿を持ち上げた。俺は目立つ先頭に配置され、肩に太い担ぎ棒を乗せて持ち上げた。
「セイヤ!」
練習なんてしていないのに全員の声が揃い、神輿が大きく持ち上がる。そしてリズミカルに声を上げながら神輿を担いで境内を一周、その後石段を下りて町へと向かっていった。
「セイヤ!セイヤ!」
神輿を持ち上げ、声を合わせる一体感が気持ちよく最初は遠慮がちだった俺もいつの間にか堂々と腕を上げ、大声を上げていた。その姿を見に集まった人々が圧倒されるように見惚れている。
こんな経験ははじめてだ。父やここにいる男たちが神輿を続けたい理由はここにあったのだろう。普段の生活では得ることのできない優越感を感じた。まるで魔王を倒して凱旋する勇者のようだ。集まった人々は老人ばかりだがそれでも俺たちの姿を見て明るい顔を見せ、声を上げたりするところを見ると余計に俺自身にも力が湧き上がってくる。
昼間は寂れていた街道も人に溢れ、かつてと変わらぬ活気に満ちていた。
「セイヤ!!」
大声を上げながらふと沿道の人に目をやるとそこには母がいた。珍しく浴衣を着た母が俺のほうを見て久しく見たことのないような満面の笑みを浮かべている。目が合うとまるで少女のように俺に向かって軽く手を振ってきた。その行為に俺はなぜかとても胸が高鳴ってしまった。
「おい、乱れてるぞ」
「すみません」
母に見惚れてつい動きがずれてしまい注意された。いつもはなんとも思わない母親に俺はなぜかとても動揺している。その動悸は収まらずどうしてこんな気分なのかと自問自答しているうちに神輿は街道をまわり神社へと戻っていった。
「お疲れ様。やっぱ若いもんがいるといいな」
「ありがとうございます」
神輿を下ろすと樽酒が開けられて全員に振る舞われた。あまり酒は飲める方ではないが勧められるままに飲むと一気に身体に染み込んできて気分が高揚していく。祭りの興奮がより増していき、さらに何杯も貰ってしまった。
「ちょっと失礼します」
男衆は樽を囲んでまだまだ飲んでいたが抜け出し人であふれる境内を見てまわっていた。神輿を見に来た町の人が集まり昔ほどではないが的屋も軒を連ねて夜の神社は賑やかな祭り一色の光景だ。
こうした景色もいまはとても懐かしく、そして愛おしく思えてしまう。
「和彦、和彦!」
祭りの雰囲気を味わっていると声をかけられて顔を向けると母がこっちに歩いて近づいてきていた。淡い水色の浴衣姿でふだんはしない化粧もしていてすっかりお祭り気分のようだ。
「お袋、浴衣なんて珍しいな」
「だってせっかくのお祭りなんだから」
俺が地元にいたころは小さいころは母と一緒に浴衣を着ていたがすぐに着ることもなくなり母の浴衣姿は久しぶりを通り越して新鮮だった。さっきからずっと頭に浮かんでいた浴衣姿をついじろじろと見てしまう。普段着の時とは違う見慣れない母の姿に俺はどうしても落ち着かなった。
「なかなか様になってたよ。仁さんも気を利かせて前にしてくれたんだね。お陰でよく見れたよ」
そう言って母は嬉しそうにスマホに収めた俺の褌姿を見せてきた。
「撮るなよ。恥ずかしいだろ」
「あとで父ちゃんに見せるって約束したからね。本当に今日は恰好良かったよ」
横に並んだ母がしおらしい声でそういうとさらに俺は動揺し、鼓動が高鳴っていく。
「お袋も来てくれてありがとう。浴衣・・・似合ってるよ」
酔っているためか俺も柄にもないことがつい口から出てしまった。横にいる母はすぐに茶化したりするのかと思ったが全く反応がない。横目で顔を覗き込むと嬉しそうにはにかんでいるのが見えた。
暗がりの中ではにかむ母の表情がとても愛おしく思えてしまう。さらに俺は胸の鼓動が高鳴り、身体が熱くなっていった。自分でも信じられないような気分だ。そして高まる気分のまま母へと声をかけてしまった。
「お袋、こっち向いてくれ」
「え、なあに?」
まだ恥じらいながらも俺のほうへとゆっくりと身体を向けてきた。肩に両手を乗せ、顔を近づけていくが動じる様子はない。そのまま俺へキスをした。
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テーマ : 官能小説・エロノベル
ジャンル : アダルト