母を守りたい ~第2章 兄との軋轢、母の幸せを願う弟~
2011年7月、梅雨が明けておらずじめじめした日が続いていた。
兄貴と義姉の間に子供が生まれた。結婚式を挙げたときにはすでに妊娠していたということを後から聞かされて驚いた。できちゃった婚だったという。
「まあ、なんてかわいいの」
俺は母さんとともに義姉のあやめさんがいる病院へと赤ん坊を見に行った。兄貴も待ってくれており、あやめさんのが抱いた赤ん坊を3人で見ていた。シワシワでどこをみているのかわからない大きな瞳は不思議な可愛さがあった。
「ほら、お前の姪っ子だぞ」
兄貴に後ろから小突かれてそっと手を伸ばすと俺の指先に触れてくれた。女の子で名前は杏奈というそうだ。
「おじさんになるんだからしっかりしろよ」
「そうだね」
杏奈から指を離して前を離れると母さんが杏奈に近づいていった。うれしそうに生まれたばかりの杏奈に話しかけながら頬を触っている。
「こんにちは杏奈ちゃん」
「ほら、杏奈。おばあちゃんよ」
あやめさんが杏奈を持ち上げて母さんに近づける。杏奈も声を出してなにかを訴えかけているようだった。
初孫の誕生を喜ぶ母さんの姿はとても微笑ましい。傍から見れば幸せな一家にしか見えないだろう。でも俺はなんだか違和感を感じていた。
母さんを残して俺と兄貴は売店へと向かった。兄貴と二人きりになったのかなり久しぶりだった。元々俺には少しつらく当たるところがあったが、家を出てからさらに険悪になっていた。いつもはあやめさんが兄貴の傍にいてくれるので兄貴はそれほどきつい態度をとらないでいてくれたが、常に俺をにらんでいた。だから売店まで行こうと誘われてとても警戒してしまった。
「母さんだけじゃなくお前も来てくれるなんて思わなかった」
「そう・・・来ないほうがよかった?」
「いや、いいんだ。あやめはお前のこと気に入ってるんだよ。納得いかないけどな」
やっぱり俺のことを兄貴はあまり良く思っていないようだった。言い返そうかと思ったがなにもいわずに黙って受け流した。
「まあそんなことはどうでもいいんだ。お前、母さんのことどう思ってんだ?」
「どうって?」
「最近頻繁に実家に帰ってるんだって。ほどほどにしろよ子供じゃないんだから」
「そんなつもりはないって。ただ母さんが心配なんだよ」
「余計なことするなよ。お前が母さんにベタベタするから再婚もダメになったんじゃないのか?」
兄貴はギラリと俺を睨みつけた。その鋭い眼差しに俺は固まってしまった。
「関係ないよ。それに母さんに再婚なんて必要ないよ。いまさらそんなこと・・・」
俺と関係を持ってしまったがために山守さんとの再婚話は母さんが断ってしまった。それ以来、もう再婚についてはだれも口にしなかったが兄貴は諦めていないようだった。
「勝手なこと考えてるんじゃねーよ。俺なりに母さんのこと考えてるんだ。母さんは今のままだとずっと一人であの家で暮らすことになる。そんなの寂しすぎるだろ。だからだれかと一緒にいるほうがいい」
「兄貴に考えのほうが身勝手だよ。母さんはそんなこと自分で望んでるわけじゃない。それに俺と兄貴がいるじゃないか。俺たちがついてあげればいいだけだよ」
「そうしたいが俺だって仕事が忙しくて自分の家族のことだって充分世話できるかわからん。お前だっていずれ結婚すると母さんを・・・」
「そんなことない!兄貴がその気がなくても、俺が母さんを守る。一人で母さんを守ってみせる!」
思わず兄貴の前でそう吠えてしまった。誰かに母さんを委ねるつもりなんてない。俺が一生母さんを守っていくつもりだ。母さんは俺の大事な女だからだ。母さんだって俺のことを愛してくれて必要にしてくれている。俺のことを唯一無二の男として愛してくれている以上守るのが男の責務だと思った。
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兄貴と義姉の間に子供が生まれた。結婚式を挙げたときにはすでに妊娠していたということを後から聞かされて驚いた。できちゃった婚だったという。
「まあ、なんてかわいいの」
俺は母さんとともに義姉のあやめさんがいる病院へと赤ん坊を見に行った。兄貴も待ってくれており、あやめさんのが抱いた赤ん坊を3人で見ていた。シワシワでどこをみているのかわからない大きな瞳は不思議な可愛さがあった。
「ほら、お前の姪っ子だぞ」
兄貴に後ろから小突かれてそっと手を伸ばすと俺の指先に触れてくれた。女の子で名前は杏奈というそうだ。
「おじさんになるんだからしっかりしろよ」
「そうだね」
杏奈から指を離して前を離れると母さんが杏奈に近づいていった。うれしそうに生まれたばかりの杏奈に話しかけながら頬を触っている。
「こんにちは杏奈ちゃん」
「ほら、杏奈。おばあちゃんよ」
あやめさんが杏奈を持ち上げて母さんに近づける。杏奈も声を出してなにかを訴えかけているようだった。
初孫の誕生を喜ぶ母さんの姿はとても微笑ましい。傍から見れば幸せな一家にしか見えないだろう。でも俺はなんだか違和感を感じていた。
母さんを残して俺と兄貴は売店へと向かった。兄貴と二人きりになったのかなり久しぶりだった。元々俺には少しつらく当たるところがあったが、家を出てからさらに険悪になっていた。いつもはあやめさんが兄貴の傍にいてくれるので兄貴はそれほどきつい態度をとらないでいてくれたが、常に俺をにらんでいた。だから売店まで行こうと誘われてとても警戒してしまった。
「母さんだけじゃなくお前も来てくれるなんて思わなかった」
「そう・・・来ないほうがよかった?」
「いや、いいんだ。あやめはお前のこと気に入ってるんだよ。納得いかないけどな」
やっぱり俺のことを兄貴はあまり良く思っていないようだった。言い返そうかと思ったがなにもいわずに黙って受け流した。
「まあそんなことはどうでもいいんだ。お前、母さんのことどう思ってんだ?」
「どうって?」
「最近頻繁に実家に帰ってるんだって。ほどほどにしろよ子供じゃないんだから」
「そんなつもりはないって。ただ母さんが心配なんだよ」
「余計なことするなよ。お前が母さんにベタベタするから再婚もダメになったんじゃないのか?」
兄貴はギラリと俺を睨みつけた。その鋭い眼差しに俺は固まってしまった。
「関係ないよ。それに母さんに再婚なんて必要ないよ。いまさらそんなこと・・・」
俺と関係を持ってしまったがために山守さんとの再婚話は母さんが断ってしまった。それ以来、もう再婚についてはだれも口にしなかったが兄貴は諦めていないようだった。
「勝手なこと考えてるんじゃねーよ。俺なりに母さんのこと考えてるんだ。母さんは今のままだとずっと一人であの家で暮らすことになる。そんなの寂しすぎるだろ。だからだれかと一緒にいるほうがいい」
「兄貴に考えのほうが身勝手だよ。母さんはそんなこと自分で望んでるわけじゃない。それに俺と兄貴がいるじゃないか。俺たちがついてあげればいいだけだよ」
「そうしたいが俺だって仕事が忙しくて自分の家族のことだって充分世話できるかわからん。お前だっていずれ結婚すると母さんを・・・」
「そんなことない!兄貴がその気がなくても、俺が母さんを守る。一人で母さんを守ってみせる!」
思わず兄貴の前でそう吠えてしまった。誰かに母さんを委ねるつもりなんてない。俺が一生母さんを守っていくつもりだ。母さんは俺の大事な女だからだ。母さんだって俺のことを愛してくれて必要にしてくれている。俺のことを唯一無二の男として愛してくれている以上守るのが男の責務だと思った。
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