母を守りたい ~序章 彼女と母の間で揺れる思い~
父さんの葬儀が終わって3ヶ月が経った11月。
墓への納骨が終わり、何事もなかったかのような平穏な日々が過ぎていた。それ以前とまるでなにも変わらないような生活、本当になにもなかったかのようだ。
父さんのいない生活に慣れつつあった。
父さんは亡くなる前から闘病生活が続いていて家にはいなかった。兄貴は大学に進学してから一人暮らしをしていて、今も実家を離れて勤め先の県庁の近くでアパートを借りている。
家には俺と母さんの二人だけしかいない。そんな生活にもすでに慣れてきていた。葬儀の直後から母さんは普段通りの生活に戻って、俺もできるだけそれまでどおりでいることに努めた。
二人きりの食事も決して寂しいものではなかった。二人だけでも家族がいるというのは違う。
「母さん、倉庫の掃除なんだけど今週は予定があるから来週でもいい?」
「いつでもいいわよ。でも悪いわ、弘司は受験生なのに家のことまでさせてしまって・・・」
「いいんだよ。力仕事くらい平気だから」
家事は母さんがしてくれるが何もかもをしてもらうわけにはいかない。俺はできるかぎり家の仕事をするようにした。
今年で47歳の母さんには倉庫の荷物整理なんてきついに決まってる。俺がやるのは当然だ。それにできるだけ体を鍛えておきたかった。
「母さん、実は大学に行かないで就職しようと思う。就職担当の先生に聞いたら今なら就職先はそこそこあるらしいんだ」
母は箸を止めて驚いたように俺を見た。
「何言ってるのよ。ちゃんと大学は出たほうがいいわ。今の成績なら国立も行けるって1学期の終わりに先生も言ってたじゃない」
「だって、大学は金がかかるから。就職すれば母さんは生活楽になるよね」
「そんなこと気にすることじゃないわ。お父さんがちゃんとお金を残してくれてるし、必要なら土地も売ればいいわ。私は弘司が大学に行くくらいで生活に困ったりしないわ」
ずっと前から俺は大学に行くとすでに父さんと母さんと話し合って決めていた。スポーツはできるほうじゃないが勉強はできた。特に数学や物理が得意で将来は工学部に行くと決めていた。
だけど、そんなことよりも今は母さんに負担をかけたくなかった。父さんは会社を経営していただけあってしっかりと遺産を残してくれた。今はそれで生活している。それでも無限にあるわけではないしいつかなくなると思えば出来るだけ母さんのために残してあげたかった。母さんの年齢を考えればさせてもらえる仕事は限られる。掃除やコンビニのレジなんて母さんにはしてもらいたくない。
就職することを了承してもらえず話はうやむやのままになった。
週末、彼女の由佳とデートに行った。
由佳とは同じ弓道部で3年になった時から付き合い始めた。まじめで学級委員などを率先するタイプだった由佳が俺に告白してきたときはすごく驚いた。俺にとって初めて付き合う人で戸惑うことばかりだけど、由佳と過ごす時間は楽しかった。今日も由佳に誘われてカラオケに行った。
「最近あんまりかまってくれないよね」
「そう・・・かな・・・」
会うなりいきなり由佳に文句を言われた。あまり意識していなかったが父さんが死んでから家にいる時間が増えていた。母さんのためにも家のことをやることが増えていたからだ。
由佳とのカラオケはあっという間に時間が過ぎて行った。お互いあんまり歌うのがうまいほうじゃないけど二人きりだから気兼ねなく楽しむことができた。2時間ほど一緒に歌った後、一旦歌うのをやめてソファに並んで座って休憩していた。
「二人きりでいるのってすごく久しぶりな気がする」
「先々週も二人で遊んだよ」
「もっと一緒にいたいよ。もっと弘司といたい」
由佳は俺の手を握って顔を近づけてきた。ものほしそうな顔で俺を見つめていて、俺も顔を近づけてキスをした。普段はまじめぶっていても由佳はとても積極的だ。一度唇を重ねるとすぐには離れようとしない。
「ねえ、弘司・・・」
唇を離すと由佳は俺の手をさらに強く握ってきて体をくっつけてきた。腕に由佳の乳房の感触が伝わってくる。由佳がどうしたいのかはなんとなく想像がついた。
「いいの?」
「うん・・・」
俺たちは付き合って半年以上経つがいまだにキス以上のことはしていない。
興味がないわけではないけどする勇気を持てなかった。でも今がその時だと思い、由佳の正面を向いて由佳のカーディガンに手をかけて肩から抜いていった。
シャツの上から由佳の乳房に手を伸ばしてそっと触れた。思った以上に膨らみがあってやわらかかった。
「はぁ・・・」
由佳は甘い声を漏らして俺の指に反応していた。手を動かして乳房を揉んでいく。初めて触れる乳房に俺は興味津々だった。強く指に力を入れて食い込ませながら手を上下に動かした。
乳房を触る感触で昔のことを思い出した。まだ小学校に入る前にふざけて母さんの胸を触ってしまったことがある。性的な欲求など全くなく、ただの興味本位で手を伸ばして触って怒られてしまった。若いころの母さんの姿、そして指に触れた感触が鮮明に思い出された。
それを思い出すと、由佳の乳房を触る指に力が入らなくなった。
幼いころに知ったあの母さんの感触がとても懐かしかった。俺が守ってやらないといけない母さん、本当に俺は由佳とこんなことしていていいのだろうか。頭の中に母さんの姿が浮かんできて消えない。いつもやさしい母さんの柔らかい笑みを想像するととてつもない罪悪感に襲われてしまった。
母さんごめん
そのまま由佳の体から手を離した。
「どうしたの?」
異様を察知した由佳はすぐに声を掛けてきたが俺は答えられなかった。
そのまま空気が冷めてしまい、俺たちは体を離してすぐにカラオケを後にした。
それからは由佳とうまく距離を得ることができなくなってしまいぎくしゃくしていった。そして1ヶ月後に別れを告げられて俺は由佳と別れた。
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墓への納骨が終わり、何事もなかったかのような平穏な日々が過ぎていた。それ以前とまるでなにも変わらないような生活、本当になにもなかったかのようだ。
父さんのいない生活に慣れつつあった。
父さんは亡くなる前から闘病生活が続いていて家にはいなかった。兄貴は大学に進学してから一人暮らしをしていて、今も実家を離れて勤め先の県庁の近くでアパートを借りている。
家には俺と母さんの二人だけしかいない。そんな生活にもすでに慣れてきていた。葬儀の直後から母さんは普段通りの生活に戻って、俺もできるだけそれまでどおりでいることに努めた。
二人きりの食事も決して寂しいものではなかった。二人だけでも家族がいるというのは違う。
「母さん、倉庫の掃除なんだけど今週は予定があるから来週でもいい?」
「いつでもいいわよ。でも悪いわ、弘司は受験生なのに家のことまでさせてしまって・・・」
「いいんだよ。力仕事くらい平気だから」
家事は母さんがしてくれるが何もかもをしてもらうわけにはいかない。俺はできるかぎり家の仕事をするようにした。
今年で47歳の母さんには倉庫の荷物整理なんてきついに決まってる。俺がやるのは当然だ。それにできるだけ体を鍛えておきたかった。
「母さん、実は大学に行かないで就職しようと思う。就職担当の先生に聞いたら今なら就職先はそこそこあるらしいんだ」
母は箸を止めて驚いたように俺を見た。
「何言ってるのよ。ちゃんと大学は出たほうがいいわ。今の成績なら国立も行けるって1学期の終わりに先生も言ってたじゃない」
「だって、大学は金がかかるから。就職すれば母さんは生活楽になるよね」
「そんなこと気にすることじゃないわ。お父さんがちゃんとお金を残してくれてるし、必要なら土地も売ればいいわ。私は弘司が大学に行くくらいで生活に困ったりしないわ」
ずっと前から俺は大学に行くとすでに父さんと母さんと話し合って決めていた。スポーツはできるほうじゃないが勉強はできた。特に数学や物理が得意で将来は工学部に行くと決めていた。
だけど、そんなことよりも今は母さんに負担をかけたくなかった。父さんは会社を経営していただけあってしっかりと遺産を残してくれた。今はそれで生活している。それでも無限にあるわけではないしいつかなくなると思えば出来るだけ母さんのために残してあげたかった。母さんの年齢を考えればさせてもらえる仕事は限られる。掃除やコンビニのレジなんて母さんにはしてもらいたくない。
就職することを了承してもらえず話はうやむやのままになった。
週末、彼女の由佳とデートに行った。
由佳とは同じ弓道部で3年になった時から付き合い始めた。まじめで学級委員などを率先するタイプだった由佳が俺に告白してきたときはすごく驚いた。俺にとって初めて付き合う人で戸惑うことばかりだけど、由佳と過ごす時間は楽しかった。今日も由佳に誘われてカラオケに行った。
「最近あんまりかまってくれないよね」
「そう・・・かな・・・」
会うなりいきなり由佳に文句を言われた。あまり意識していなかったが父さんが死んでから家にいる時間が増えていた。母さんのためにも家のことをやることが増えていたからだ。
由佳とのカラオケはあっという間に時間が過ぎて行った。お互いあんまり歌うのがうまいほうじゃないけど二人きりだから気兼ねなく楽しむことができた。2時間ほど一緒に歌った後、一旦歌うのをやめてソファに並んで座って休憩していた。
「二人きりでいるのってすごく久しぶりな気がする」
「先々週も二人で遊んだよ」
「もっと一緒にいたいよ。もっと弘司といたい」
由佳は俺の手を握って顔を近づけてきた。ものほしそうな顔で俺を見つめていて、俺も顔を近づけてキスをした。普段はまじめぶっていても由佳はとても積極的だ。一度唇を重ねるとすぐには離れようとしない。
「ねえ、弘司・・・」
唇を離すと由佳は俺の手をさらに強く握ってきて体をくっつけてきた。腕に由佳の乳房の感触が伝わってくる。由佳がどうしたいのかはなんとなく想像がついた。
「いいの?」
「うん・・・」
俺たちは付き合って半年以上経つがいまだにキス以上のことはしていない。
興味がないわけではないけどする勇気を持てなかった。でも今がその時だと思い、由佳の正面を向いて由佳のカーディガンに手をかけて肩から抜いていった。
シャツの上から由佳の乳房に手を伸ばしてそっと触れた。思った以上に膨らみがあってやわらかかった。
「はぁ・・・」
由佳は甘い声を漏らして俺の指に反応していた。手を動かして乳房を揉んでいく。初めて触れる乳房に俺は興味津々だった。強く指に力を入れて食い込ませながら手を上下に動かした。
乳房を触る感触で昔のことを思い出した。まだ小学校に入る前にふざけて母さんの胸を触ってしまったことがある。性的な欲求など全くなく、ただの興味本位で手を伸ばして触って怒られてしまった。若いころの母さんの姿、そして指に触れた感触が鮮明に思い出された。
それを思い出すと、由佳の乳房を触る指に力が入らなくなった。
幼いころに知ったあの母さんの感触がとても懐かしかった。俺が守ってやらないといけない母さん、本当に俺は由佳とこんなことしていていいのだろうか。頭の中に母さんの姿が浮かんできて消えない。いつもやさしい母さんの柔らかい笑みを想像するととてつもない罪悪感に襲われてしまった。
母さんごめん
そのまま由佳の体から手を離した。
「どうしたの?」
異様を察知した由佳はすぐに声を掛けてきたが俺は答えられなかった。
そのまま空気が冷めてしまい、俺たちは体を離してすぐにカラオケを後にした。
それからは由佳とうまく距離を得ることができなくなってしまいぎくしゃくしていった。そして1ヶ月後に別れを告げられて俺は由佳と別れた。
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